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「皮膚バリア機能におけるセラミドの役割とスキンケア用途における正しい配合の重要性」についての研究

要約

セラミドが皮膚バリア機能の維持において重要な役割を果たしていることについて説明しています。セラミドは、皮膚の角質層に存在する脂質で、水分の蒸発を防ぎ、外部からの刺激物の侵入を防止します。皮膚のバリア機能が損なわれた場合には、適切に調合されたセラミドが効果的であると研究されました。しかし、セラミドが正しく溶解されていないと、その効果が減少するため、スキンケア製品への適切な配合が重要と示しています。


The role of ceramides in skin barrier function and the importance of their correct formulation for skincare applications
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ics.12972

2024年8月7日

セラミドの役割と重要性

セラミド(Ceramide)は、皮膚や細胞膜に存在する脂質(脂肪分子)の一種です。セラミドは、皮膚の角質層に多く含まれており、主にバリア機能の役割を果たしています。具体的には、皮膚の水分を保持し、外部からの刺激や異物の侵入を防ぐことで、皮膚を健やかに保つ働きをしています。




皮膚バリア機能の維持: セラミドは、角質層の細胞間に存在する主要な脂質であり、水分の保持と外的要因からの保護に重要です。セラミドの量や組成が変化すると、脂質の配列が乱れ、バリア機能が低下する可能性があります。


セラミドの構造と分類: セラミドは、その分子構造に基づいていくつかのクラスに分類されます。脂肪酸の種類やスフィンゴイド基の種類により、異なるタイプのセラミドが存在します。


バリア機能と疾患: 皮膚のバリア機能の低下は、アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患と関連しています。これらの疾患では、セラミドの量や種類が変化し、脂質の構造が乱れることが観察されています。

セラミドを適切に配合した製品を使用することで、皮膚のバリア機能を回復し、保湿効果を高めることができます。しかし、セラミドを効果的に製品に取り込むためには、製造過程での適切な処理が必要です。セラミドは高温で溶解される必要があり、冷却過程での再結晶化を防ぐために慎重な配合が求められます。

セラミドの効果的な配合には、いくつかの課題があります。セラミドは適切に溶解されていないと結晶化し、皮膚バリアの回復効果が減少することが確認されています。セラミドを配合した製品を開発する際には、溶解度を維持するために、特定の油脂、乳化剤、増粘剤を選択する必要があります。


本サイトの調査では以下があることが確認できました。

・油脂(エモリエント)

極性エモリエント
極性エモリエントは、セラミドのような極性分子の溶解性を高め、セラミドが皮膚の角質層に効果的に浸透するのを助けます。

スクワラン(Squalane):肌の皮脂に自然に存在するスクアレンから派生した安定なエモリエントです。皮膚への浸透が良く、セラミドの溶解性を向上させる効果があります。軽い感触でべたつかず、皮膚の柔軟性を高める効果があり、敏感肌にも適しています。

トリグリセリド(Triglycerides):カプリル酸・カプリン酸トリグリセリド(Caprylic/Capric Triglyceride)などの中鎖トリグリセリドは、セラミドの溶解性を高め、製品の感触を滑らかにします。安定性が高く、酸化しにくい特性があり、保湿効果もあります。

イソステアリン酸イソプロピル(Isopropyl Isostearate):セラミドとの相性が良く、セラミドの溶解性を高めるために使用されます。軽い感触で、肌に滑らかな塗布感を与えます。

非極性エモリエント
非極性エモリエントは、セラミドを含む脂質の安定性を向上させるために使用されます。

ジメチコン(Dimethicone):シリコーンオイルの一種で、保護膜を形成し、皮膚の水分蒸発を防ぐ効果があります。滑らかでシルキーな感触を与えます。非極性であるため、セラミドとの相互作用は少ないですが、製品の全体的な安定性と使用感を向上させます。

ミネラルオイル(Mineral Oil):非常に安定で酸化しにくい油脂で、皮膚の保湿と保護に役立ちます。敏感肌でも使用可能ですが、一部のユーザーは鉱物油を避ける傾向があります。

天然植物由来の油脂
天然の植物由来の油脂は、保湿効果が高く、セラミドの効果を補完する成分として非常に人気があります。これらのオイルは、多くの場合、必須脂肪酸や抗酸化物質を含み、皮膚のバリア機能をサポートします。

ホホバオイル(Jojoba Oil):ワックスエステルであり、皮脂の成分に似ているため、皮膚に非常によくなじみます。セラミドとの相性が良く、製品の保湿効果と浸透性を向上させます。

アルガンオイル(Argan Oil):高い保湿力を持ち、ビタミンEや必須脂肪酸が豊富で、セラミドと組み合わせることで、皮膚のバリア機能を強化します。軽く、速乾性があり、べたつきが少ないため、さまざまな肌タイプに適しています。

アボカドオイル(Avocado Oil):オレイン酸とリノール酸が豊富で、乾燥した肌や敏感肌に特に効果的です。セラミドと併用すると、皮膚の水分保持力が向上します。

エステルオイル
エステルオイルは、軽い感触と高い浸透性を持ち、セラミドを含む製品に多く使用されます。

オクチルドデカノール(Octyldodecanol):セラミドの溶解性を向上させる軽い感触のエモリエントで、肌に潤いを与えつつ、べたつきを抑えます。製品の滑らかさを増し、皮膚への塗布感を良くします。

・乳化剤

ラメラ乳化剤(層状乳化剤)
ラメラ乳化剤は、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸のラメラ構造(層状構造)を形成し、安定させるのに適しています。これにより、皮膚の天然バリアの構造を模倣し、バリア機能をサポートします。

セテアリルグルコシド(Cetearyl Glucoside): セテアリルアルコールとグルコースから作られた乳化剤で、天然由来であり、皮膚に優しい成分です。皮膚への刺激が少なく、保湿効果を提供します。

グリセリルグルコシド(Glyceryl Glucoside): 保湿効果が高く、セラミドのラメラ構造を安定させるのに役立ちます。

アニオン性乳化剤
アニオン性乳化剤は、セラミドや他の脂質との相互作用を強化し、皮膚のバリア機能をサポートします。

ステアリン酸グリセリル(Glyceryl Stearate): 天然由来の乳化剤であり、セラミドを含む製品に適しています。保湿効果があり、製品の感触を滑らかにします。

コレステロール(Cholesterol): 自然の皮膚バリアの成分であり、セラミドと一緒に使用することで、皮膚のバリア機能を模倣し、安定化させる効果があります。

非イオン性乳化剤
非イオン性乳化剤は、皮膚への刺激が少なく、セラミドの溶解度を高め、製品の安定性を向上させます。

ポリグリセリル-3メチルグルコースジステアレート(Polyglyceryl-3 Methylglucose Distearate): 高い親水性と親油性を持ち、セラミドを含む油性成分と水性成分を安定して乳化するのに優れています

ステアリン酸PEG-100(PEG-100 Stearate): 皮膚に優しく、セラミドとよく相性の良い乳化剤で、製品の感触を滑らかにします。

・増粘剤

天然由来の増粘剤
天然由来の増粘剤は、皮膚に優しく、敏感肌にも適しています。これらは製品の粘度を自然に調整し、ラメラ構造の安定化を助けます。

キサンタンガム(Xanthan Gum):自然発酵により得られる多糖類で、優れた増粘性を持ち、低濃度で効果的に粘度を調整できます。安定性が高く、広いpH範囲で使用可能で、セラミドと相性が良いです。

ドロキシエチルセルロース(Hydroxyethyl Cellulose):セルロース由来の水溶性増粘剤で、透明なゲル状を形成し、製品の安定性を向上させます。肌への塗布感を改善し、保湿効果を持つ他の成分との相乗効果を期待できます。

カラギーナン(Carrageenan):海藻から抽出される天然増粘剤で、セラミドのラメラ構造を安定化させるのに役立ちます。保湿効果があり、肌の滑らかさを向上させる特性があります。

合成増粘剤
合成増粘剤は、製品の安定性とテクスチャーを強化し、高い効果を発揮するために使用されます。

カルボマー(Carbomer):合成の高分子化合物で、非常に効果的な増粘剤です。少量で高い粘度を提供し、透明で安定したゲルを形成します。製品の安定性を高め、長期間の保存でも粘度を保持します。ただし、使用前に中和剤(例: トリエタノールアミン)を必要とする場合があります

アクリル酸アルキル共重合体(Acrylates/C10-30 Alkyl Acrylate Crosspolymer):高い増粘効果と安定性を提供し、乳化剤としても機能します。クリームやローションなどのスキンケア製品で広く使用されます。透明で滑らかな質感を持ち、セラミド配合製品のテクスチャーを向上させます。

天然と合成のハイブリッド増粘剤
一部の増粘剤は、天然成分と合成成分の特性を組み合わせており、製品のパフォーマンスを向上させるために使用されます。

ポリアクリルアミド(Polyacrylamide)とC13-14イソパラフィン、ラウレス-7(Laureth-7):合成増粘剤とエモリエントの組み合わせで、滑らかでクリーミーなテクスチャーを提供します。高い増粘効果があり、セラミドと他の成分を均一に分散させるのに役立ちます。

※セラミドを含む最適な製品のタイプ(例えば、クリーム、ローション、ジェル)や、製品の用途(保湿、バリア強化など)によって異なります。一般的には、天然由来のモノは、敏感肌にも適しており、ラメラ構造を安定化させるのに役立ちます。製品の最終的な目的に合わせて、使用者の判断で製品をお選びください。


セラミドは、皮膚バリアを維持するための重要な成分であり、特に高齢化や季節的な変化、外部からの影響によってセラミドの量が変化することでバリア機能が低下することがわかっています。したがって、セラミドを適切に配合し、溶解度を維持する成分を入れているスキンケア製品は、皮膚のバリア機能の維持と回復に効果的であると考えられます。


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